紅(あか)の軌跡
貴方の瞳に囚われて
私はまるで羽をむしりとられた蝶のように
怠惰に白布(シーツ)に横たわる
自由という羽を失った私は芋虫
無言で貴方を見つめ返す
貴方の魅せる夢幻(ゆめ)を今か今かと心待ちにしながら
手を伸ばしても届かない
けれど貴方という存在はいつも私の心の中で生き続けている
なんておかしな関係
白布(シーツ)の上に溜まった小さな血溜(ちだまり)を見つめながら
ヒトゴトのようにそう呟く
紅い汚点(しみ)は燃えるような命の証
この証を貴方に見せてあげたい
貴方に私の生きた証をあげよう
私が“わたし”で亡くなる前に
貴方を包む全てのものが
柔らかな微笑(ほほえみ)で私を迎えるその日まで
私は貴方を見つめ続けよう
私の胸にしまいこんだ幼い少女は
きっと貴方を恋しく想い
愛しい人の名を何度も何度も
呼び続けるだろうから
私は一生涯貴方だけを愛し続けよう
これが最期の誓いの言葉となるように
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