アゲハの悲劇
雨露に羽を濡らした揚羽蝶
黄色と黒の美しい羽を半開きに傾かせながら
冷たいアスファルトの上に横たわる
まるで鋭いピンで留められてしまった標本のように
身体をぴくりとも動かさず
周りの喧噪にも目もくれず
ただじっと濡れるに任せて佇んでいる
優しく咲き誇った花々の周りを飛び回り
甘い蜜を思う存分身体に取り入れていたあの頃すらまるで忘れてしまったかのように
ああ、はかなくも小さき生き物のなんと哀れなことか
灰色に濁りし雲は彼を明るく照らすことなく
ただ無表情に見下ろすだけ
無惨に降りしきる雨で冷え切った身体は
すでに蝋のように堅くなり
心すら閉ざして黙しているというのに
誰もその暖かな手のひらで包もうとはしない
ときおり尖った雨粒が
彼の身体を刺し通そうとせんばかりに
斜め一直線に降りては跳ね返り
陰気でもの悲しいハーモニーを奏でている
ああ、蝶よ
麗しき世界の女王よ
少しでも羽ばたくことが許されるならば
羽を力の限り震わし
どこまで続くか分からぬ
この灰色に薄汚れし雲から
呪われし我らを救っておくれ
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