貧困
畑仕事の帰り
バス停で待つ間
スマホの画面見る母
顔色がサッと変わる
「ドレスを新調するなんて!」
聞けば去年
母が所属する合唱団の本番衣装を新調して
お金も払ったばかり
それなのに今年また新調するとなると
お金がかかるし
合唱団自体やめざるおえないらしい
75歳で定年退職した母
また新たな働き口を探さなきゃと
大きなため息をついた
あくる朝
母は購読していた小冊子や
新聞を断る電話をしていた
このまま購読料を払い続けるのは
家計がもたないと母は渋々断念したのだ
私はというと、職場のAI導入により
戦々恐々とする仲間の鬱憤の的となって
休職を余儀なくされている
もちろん給与は出ない
私も長年在籍していた合唱団を辞め
できる限り切れるものは切ってきた
徐々に目減りする銀行通帳残高
働き口を探そうにも
会社に在籍中の身で動き回れば
後々違約金を払わされるかもしれない
じわじわと足元に迫り来る貧困
まるで荒波のように
このまま母と二人して
体ごと飲まれてしまうのか
そうはさせぬと己を奮い立たせ
いま壁際に立つ
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