ant
年老いた蟻が
杖をつきながら歩いていた
もう死ぬほど働いて
六本あった脚も
半分になってしまった
働けなくなった蟻は
追い出されるしかなかった
居場所を探して歩き回った
羽根の千切れた蜂を見かけた
何だか楽しげな顔をしていた
光と風と雨は万者に分け隔てなく
優劣や貧富の差は
とうに意味を失う
幸せかどうかを決めるのは
いつでも自分である
他者の尺度は必要ない
働くことが幸せだと感じる者
働かないことが幸せだと感じる者
それは全て自由である
他者と比べようとする
そのモノサシが邪魔をする
捨てられればみんな幸せ者
年老いた蟻は
地面に腰をおろし
杖で絵を描いてみた
それは働いていた時には
味わうことのできない
心の安泰であった
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