ピクニック
ある国にお洒落な王様がおりました
王様はピクニックが大好きでした
いつものように一番お気に入りの
王冠と服と靴とマントとステッキを選び
大好物のサンドイッチを籠に入れ
愛犬のペスに咥えさせ出掛けました
歩いていると
目の不自由な老婆に出会いました
老婆は杖を川に落としてしまったようで
とても困っているようでした
王様はステッキを与えました
老婆は泣きながらそれを受けとりました
また歩いていると
幼い二人の兄妹に出会いました
兄妹は孤児のようで
とてもお腹を空かしているようでした
王様はサンドイッチを与えました
兄妹は嬉しそうにそれを食べました
また歩いていると
服を着ていない青年に出会いました
青年は盗賊に襲われたようで
とても怯えて震えていました
王様は服と靴を与えました
青年は心を落ちつかせそれを着ました
また歩いていると
巣から落ちた雛鳥を見つけました
雛鳥は巣ごと飛ばされたようで
空を飛び回る親鳥を必死に呼んでいました
王様は王冠ヘ雛鳥を入れ木へ登り枝に置きました
親鳥は雛鳥の無事を確認し力強く囀りました
また歩いていると
どこからか赤ん坊の泣き声が聞こえました
草むらの陰で見つけた赤ん坊は捨て子のようで
王様はその赤ん坊をとても不憫に思いました
王様はマントで赤ん坊を包み込むと
空の籠に寝かせ抱きしめながら帰りました
帰りの道中で
冷たい風が吹き荒れましたが
今日出会った人々の喜んだ顔を思い出すと
王様の心は温まり寒さも吹っ飛びました
お城の近くまできたとき
誰かが王様の姿を見て呟きました
「王様が、裸だ」
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