MOS
"Good Bye"を
"忘れない"と
訳してみたら
担任に呼ばれ
説教を受けた
"矛盾してるわ"
僕は出題文の中から
主人公の未練を感じ
その思いを反映した
"あなたは何と訣別したいの"
担任の問い掛けに僕は答えた
"叶わぬ恋という名の風です"
それは出来る限りの告白であった
彼女がどう理解したかは知らない
卒業を句切りに別時間に飲まれた
その六年後
思いもせず
時が交わる
勉学を投げ出した僕は
口銭を稼ぐ理由だけで
コンビニ店員を演じた
ただ延々と変わらぬ風景が
網膜に投影され記録される
感覚はとっくに機能停止だ
唯一の刺激と言えば
犯罪を水際で防ぐ事
つまりは万引き発見
その日は先輩の代打勤務で
あまり乗り気ではなかった
日が沈むかどうかの時間帯
部活帰りらしき男子学生集団
その中の一人が鞄にお菓子を
秘かに忍ばせたのを僕は見た
よくあることだし慌てない
店を出る前に声をかけよう
そう判断し気づかない振り
いよいよあの台詞を言う時だ
"ちょっといいかな"極自然に
面倒にならないよう祈りつつ
結果から言えば割と面倒だった
少年は逃げる僕が追いかけ捕獲
警察が来て親と担任が呼ばれた
涙目の少年と号泣しながら責める親
それを宥める僕と何故かお巡りさん
そこに吹き込んだ風に僕は固まった
お辞儀と優しい声で謝罪を述べる声
少年の担任らしき女性が顔を上げる
一瞬で脳は彼女であると理解をした
その後のことはあまり覚えていない
心の中をあの日訣別したはずの風が
轟々と嵐の如く掻き乱していたから
恋は繭破る
毒を宿して
痛みを欲す
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