めだま
あなたの好むスープを造るのだ
肉屋で一番のテールを買う
中心の白く太い骨を肉が囲む
まるで巨大な目玉のよう
わたしをじっと見ている
あなたは言う
「タンよりもテール」
わたしの臀部には興味を示さない
悔しいから
色々混ぜて煮込んであげる
・セロリ
(人生の苦味を味わってこそ男)
・茗荷
(わたし以外の女の名前忘れてよ)
・生姜
(冷たいあなたも悪くないけれど)
さぁ召し上がれ
何も知らないあなた
目玉にかぶりつく
あなたの唇が
柔軟な肉塊をほぐす
猫みたいに目を細めて
それほど好きなのね
わたしにもシッポさえあれば
こんな風に手間暇かけずとも
あなたを引き留めて置けるのに
容易く惑わすこともできるのに
でもわたしにはソレがない
だからスープを造るのだ
不意撃ち
あなたがわたしの口を塞ぐ
美味しいとは絶対に言わない
代わりにそんなことをしてくる
「タンよりもテール」
なんて言っておきながら
わたしの舌を羽交い締めにする
目玉の臭いだ
心地よくはないけれど
キライじゃない
体の内側から
目玉に見られている
みられている
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