泡唄(a water)
海が 横たわっている
波形は 満ち引きを 繰り返す
魚の骼と 鳥の翅と
地を這う根で 艘を編んだ
シュノーケルは 失したまま
台風の多すぎた あの夏に
白を切るのに 慣れてしまった
溶け込む術が 染み付くように
ショーケースの中 色褪せゆく憧憬
悲しみは 零れぬように手で受け
君から届いた 潮香る小瓶
その内側 海蛍の游ぐ
そより そより
しばし 眺める
蓋を 開けた
海が 飛び出した
満ちた 溢れた
声が する
"さあ 奏でなさい"
顔撫でる 汐の寝息
ああ 撰ばれたのか
もう 平伏すしかないのだな
潜れ 潜れ 深く 深く
不覚にも グレー
静寂に 沈む
リズムは プリズム
Please me
どうか わたしを
消えた唄
ひそりと うたふ
消えた唄
ゆたり たゆたふ
声は 泡となり
空を 目指す
昇る 昇る 昇る
海は まだ
夢の中
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