羅針盤
君の捨てた錆びついて狂ったコンパスで
先行きの知れない明日をコンプしたい
ひび割れたガラスの向こう
灯らない星座が踊っている
夜を裂く雨音は僕の胸を叩き
「行け」と言うのか、「留まれ」と言うのか
君が置き去りにした方舟は
沈むことなく漂い続ける
それでも僕はこの錆びついた針に
一縷の真実を探してしまう
風は気まぐれに歌を変え
雲は嘘みたいに形を変える
それでも空がある限り
僕は足を止めないと決めた
触れたら砕けそうな君の言葉が
いつまでも耳の奥に刺さっている
「自由なんて名の牢獄だ」
そんな声が記憶の底を攪拌する
漂流者でいい、地図はいらない
この針が狂ったままでいい
君の捨てたコンパスが示すのなら
どんな道でも僕の航路になる
夜明けが背を向けても構わない
沈む太陽に向かって泳ごう
足りないものだらけのこの世界で
何も持たない自由を選ぼう
君がいた日々は蜃気楼のように揺れ
幻のように僕を惑わせる
それでもいい、追いかけることで
僕は僕でいられる気がする
未来のどこかに答えがなくても
狂ったコンパスが指し示すその先で
僕は明日を掴むつもりだ
君が置いていった夢の欠片を胸に
この旅が終わる頃、僕が手にするのは
地図にない場所かもしれないけれど
それでも君に伝えたい言葉がある
「有難ふ」と、ひとことだけ
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