ありがとうの石
知らない誰かが
ひょっこり現れて言いました
「この石に、価値はあるかな?」
切株くらいの、ただの大きな石
色もくすんで、ただのゴツゴツした石
私は答えました
「ただの石に価値なんてあるわけないじゃないですか」
するとその人は、にっこりもせず
「じゃあ価値をあげよう。きみがそれを感じられるようにね」
その途端、強い風がビュウと吹いてきて
まるで見えない手で押されるように、私はふらつきました
足がガクガク、立っていられないほどの力に押されて
ふと後ろを見ると、そこはなんと絶壁!
足を踏み外せば、まっさかさま
私はびっくりして、目の前の石に必死にしがみつきました
石は冷たくて、硬くて、頼もしく
大丈夫だよと語りかけているようでした
風がおさまった後、その人がもう一度聞きました
「どうだい、石に価値はあったかな?」
私は涙を流しながら、ぎゅっと石を抱きしめ
何度も「ありがとう、ありがとう」と繰り返しました
常識が一瞬で覆るのを私は身をもって学びました
価値は私たちの置かれた状況で変化します
あなたはこれを覆せますか?
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