私の名医
「あんたは私の名医じゃ」
ばあちゃんがよく言ってた。
晩年、体調を崩しがちなった。
少しずつ物忘れも多くなっていった。
僕はおばあちゃん子だ
かちかちに握ったおにぎり
何も隠しきれてない隠し味の
にんにくと醤油が入ったカレー
今にも形がなくなりそうなおでん
シワシワの顔
あったかくて細い手
いつも明るくて
冗談が好きで
優しいばあちゃんが大好きだ
あんたは私の名医じゃ
初めて聞いた時
正直ボケたんかと思った
「ばあちゃん、俺、医者じゃないよ」
「うんや、あんたの顔みて、
声聞いたら元気になる!」
シワシワの笑顔で言う
そういうことか
えかった、まだボケとらん。
ばあちゃん、俺はヤブじゃ
本物の名医はずっと元気にできんと
ばあちゃんが俺の名医だったんじゃね
最近わかったんよ
俺は今でも元気じゃけぇね
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