思い出の裏側で
幼い頃に僕がぶちまけた
アクリル絵の具を涙で溶かして
あの子はシャボン玉を吹く
赤色 青色 緑色
塗り損なった淡い空に
煌めく玉を沢山飛ばす
昨日の夕暮れに浮かべた風船や
明日の朝靄に滲ませた手紙は
誰のもとに届いたのだろうか
未熟な僕が喉を詰まらせた
裏路地や 高架下の影で
あの子は高らかに笑う
湿った景色の至る所に
こびりついた赤錆とカビを
無邪気な声で洗い流す
ぽつり ぽつりと儚く降った
雨粒達の破片を照らして
陽はどこに昇ったのだろうか
澄んだ靴音を響かせながら
僕の脳みそのしわの縁を
見知らぬあの子は駆け回る
その背中を追いかけながら
僕は仄暗い記憶の淵を
ささくれた指で掻き回す
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