真っ赤な汽笛を待っていた
ともだち ふるさと さようなら
そんな言葉を細かく砕いて
枕元の砂時計に流し込んだ夜は
この 酷く色褪せた記憶が
埃まみれのアルバムを抜け出て
瞼の縁をそっと撫でる
微睡みの壁に四方を囲まれた
小さな公園で 僕は遠い昔
かけがえのない日々を過ごした
お揃いの服を着て 同じ歌を口ずさむ
男の子でも女の子でもない
沢山の子供達と一緒に
僕らは色々な遊びをした
へその緒を手繰る仕草を真似て
甘い実を付けた木に登ったり
夢の水面に映った幻を
無邪気に語り合いながら
砂場で家や人形を創ったり
薄紫に染まった空は
朝焼けだったのか 夕焼けだったのか
揺りかごのようなブランコに乗って
暖かい風に包まれていた時
壁の向こう 水平線から僕らを見守る
大きな太陽と目が合った
公園の名前も 子供達の顔も
あの場所にいた理由さえも
今はもう思い出すことができない
ただ あの頃 僕はずっと待っていた
真っ赤な汽笛が鳴り響くのを
不思議な気持ちで待っていた
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