夢見の桟橋
瞼の裏 丸天井の星空の下
幾何学模様を映し出す海
寄せては返すさざ波の中へ
溶け込んでゆく胸の鼓動
苔にまみれた桟橋の縁で
僕は渡し舟を待つ
淡く照らされた睫毛の先が
蜃気楼のように浮かんでは消える
文字盤を持たない時計の針
それをぼうっと見つめていると
意識と体の結び目が解けて
異なる時間を刻み始める
波も 星も やがて乗る舟も
音を立てずに揺れるこの場所で
僕は夜毎 無言の歌を口ずさむ
昨日落としてしまった疑問と
もっと遠い昔に失くした
温もりや不安の断片で紡いだ歌を
今夜の船頭は誰だろうか
僕はどこへ流されるのだろうか
薄らいでゆく水平線の方から
小さな影がやって来る
頬を包み込む手の平のような
優しい風を引き連れて
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