秋の手前の街角に

果樹は幾つもつけた実に
夢と希望で色を塗り
少しの不安に落とした葉は
土が優しく受け入れる

愚図つきながら流れる雲も
ひとしきり泣いておさまれば
空に優しく抱き寄せられ
微睡むうちに溶けてゆく

移り変わる景色を見つめ
あの子は一人立っていた
秋の手前の街角に

誰にも会わない気楽さに
何にもならない身軽さに
陽気な口笛吹きながら

誰にも会えない寂しさを
何にもなれない虚しさを
赤いそよ風に隠し込み

滲んだ夏の終わりを見つめ
あの子は一人立っていた
秋の手前の街角に


20/09/17 13:58更新 / わたなべ
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