徘徊
信号機の赤と青は
それぞれが別の入り口です
待ってたつもりが迷い込んで
僕は知らない場所に行きます
訳の分からない標識が
一方通行ばかり作って
むやみに背中を叩きます
歩道のタイルに沢山掛かった
電線の影はどれも川です
その中で舟を漕ぐ人達の
掠れた口笛を僕は聴きます
何だか寂しい旋律に
足の裏がぬかるみ出すと
よろけてまともに立てません
あちらこちらがまだらです
景色の隅から漏れ出す色が
僕の考えにそっぽを向いて
距離や方角を壊します
あの頃そのとき渦巻きます
懐かしい音で響く声が
僕の大切な思い出を
他人のふりして冷やかします
そして延々と
ただ延々と
浮き島を渡り歩くように
僕はどこかを目指します
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