爆心地

丘の上 寂しく佇むポプラの木
枝に腰かけた子ども達が草笛を吹く
あどけない旋律を飲み込むように
火薬の乱痴気騒ぎが押し寄せて

それは不恰好な歌 背伸びした歌
瞼に焼き付いた荒れ地を
震えながら撫で回す歌

無数の穴が満足げに吐いた溜息は
小さな手の平からささくれ立った指を伸ばして
入道雲に血を滲ませた後
溶けるように消えていった

爆撃機が赤黒い空を誇らしげに
トンボの群れと並んで駆けていった
風が雨の降り出す前の匂いを
巻き上げながら過ぎていった

丘の上 寂しく佇むポプラの木
枝に残された枯葉が囁きかける
迎えに来たカナリヤの羽の中
微睡みだした子ども達に向けて

それは懐かしい歌 愛おしい歌
爆心地へと飛び立つ心を
震えながら抱き締める歌


23/02/10 21:50更新 / わたなべ
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