ふわあり とろり
真昼の青空に隠された悲しさと
夜の霧に紛れた寂しさが抱きあって
泣いたからよく見えるのです
星も月もよく光るのです
松林の向こうで歌っていた潮騒が
いつの間にか街角へ流れ込んで
寝間着で散歩をしていた人は
淡い色の貝殻を拾うのです
沢山並んだ影が重なって
不思議な形と模様です
自分でもない 誰かでもない
ふわりと揺れるそんな場所です
階段を駆け上る子どもたちの背中を
手摺に残されたぬくもりが追いかけて
屋根から屋根へ跳びまわるのです
遠くを目指していくのです
萎れた顔が苔だらけの舌を
土手の上から弓なりに伸ばして
裸足で散歩をしていた人は
無自覚のまま餌になるのです
溶けた時間が型から漏れて
不思議な形と模様です
昨日でもない 明日でもない
とろりと渦巻くそんな時です
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