赤い沖
僕ら二人は向かいあった小島から
互いを遠く見つめていた
あの子の足元で蕾が花開くと
僕の背後で木が葉を落とした
僕らの間では潮騒が響いて
マストの折れた船が沈みかけていた
吹き付ける生温い風が
黄ばんだ帆を揺らしていた
背丈の低いあの子の方が
何故か僕よりも影を長く伸ばしていた
あの子が叫んだ言葉を僕は聴き取れなかった
それは海猫の鳴き声のように甲高かった
水平線からこちらを覗き込む太陽は
一向に沈む気配がなかった
だから僕らの目と頬は
いつまでも赤く染まっていた
20/05/14 12:45更新 /
わたなべ
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