大人になれないこどもたち
ぼくがまだ小さかったとき
不思議なことが沢山あった
幼稚園でいたずらをして
先生にひどく怒られた
でもその後にぼくが遊具で怪我をして
泣いているのを見つけたら
先生は優しく抱きしめてくれた
いたずらをしたぼくを先生はなんで慰めてくれたのか
よくわからなかったけど 安心した
新しく始まったアニメを
夢中になって見た次の日
友達が朝一番にそのアニメの話をして
ぼくが話し出す前に手を握って
なりきりごっこに誘ってくれた
なんで友達はぼくがそれを見たことを知ってたのか
よくわからなかったけど 嬉しかった
わからないことに驚いてばかりで
なんだか素敵なショーみたいだった
いつもステージを見上げて胸をときめかせてた
僕は背と脳が大きくなると
色々な事が辛くなった
大学の講義に納得できず
自分のやり方で課題を進めた事があった
けれどその後に意見も聴こうと
教授の研究室を訪ねたが
鬱陶しそうな顔であしらわれた
彼は僕をなぜ嫌って避けていたのか
どうしても分からず 不安だった
僕は夢や内的世界
抽象的な物事に熱を上げた
友人達も興味を持っていると思った
けれど朝顔を合わすと僕が話し出す前に
彼らは服や異性の話をしながら先へ行った
なぜ彼らは僕の夢中になる事に見向きもしなかったのか
どうしても分からず 寂しかった
分からない事に悩んでばかりで
どこもかしこも試験会場のようだった
いつも手探りで答えを求めて胸が苦しかった
私は身も心も変化がなくなった頃
何かにすがる思いでサーカスを見に出掛けた
めくるめくパフォーマンスは
久しぶりに胸をときめかせた
しかし途中現れたクラウンが
故意に椅子から転げ落ちたり
ジャグリングを失敗する様を見て
お客がみんな抱腹絶倒の中
私はどうしても笑えず 胸が苦しかった
テントを出ると
もう空は赤くなっていた
帰ろうとした僕のそばで
子供が母親に泣きついていた
風船 風船が飛んでいっちゃったよ
名残惜しそうにその子が指さした方
雲の切れ間の夕焼けを 僕は見上げた
優しく抱きしめてくれた先生や
遊びに誘ってくれた友達の顔
懐かしい面影が遠く流れていった
なぜその時胸がときめき 苦しくなったのか
答えはわからなかった
でもなんだかとても素敵で ぼくはずっとずっと見上げてた
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