春は
春はおかしな匂いです
赤んぼのような草の芽を
桜が優しい顔を下ろして
揺れながらあやしてると
側溝のドブが羨ましがって
水面を上げるものだから
鼻が錯覚おこします
春はなんだか落ち着かないです
ウサギのようにステップ踏む人
そのすぐそばをすり足で
ヘビが這うように過ぎる人
ばらばらな足取りの中を
縫うように歩くものだから
歩調が合わずにつまずきます
春はどこか不気味です
うかつに本を開いたら
文字がにじんで欠けだして
花粉のようにインクが飛んで
部屋中みたすものだから
抑えつけながら読まないと
目がむずかゆくてたまりません
春はおかしな匂いです
落ち着かなくて 不気味です
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