ふたりきり

あの子の毛のついた首輪が
土手をさまよう頃
僕はカーテンしめきって
夕暮れからきた寂しさと
ふたりきり

はっきり滲んだ向こうのそばに

月の瞳に見つめられると
どうにもならないうちにじゅわっと
薄く溶けてしまうから
僕はあの子の耳のぬくもり
毛布抱きしめて思い出した

月の光に撫でられると
どうにもならないうちにぼうっと
遠く流れてしまうから
僕はあの子の揺らした草の音(ね)
枕のそばがら鳴らして真似た

はっきり滲んだ向こうのそばに

あの子の毛のついた首輪が
土手をさまよう頃
僕はカーテンしめきって
あの子のふりした寂しさと
ふたりきり
ふたりきり


20/02/16 17:24更新 / わたなべ
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