境目の家路
寂しく濁ったとぎ汁を
母さんが流したのだ
それは町に染み込んでいき
僕のシャツにも
あの子のサンダルにも
地平線へと後ずさりする
かげろうを追いかけるように
ヒグラシが鳴き始め
水田が光る
ブナ林が揺れる
家と山とを優しく結ぶ
十字路には二つの絵の具が
道路反射鏡にも塗られ
さよならの赤
もう少しの青
ゆっくりと姿を隠す雲を
見上げる案山子は斜め立ち
飾りの麦わらも直さず
星を待っている
月を待っている
19/09/10 23:08更新 /
わたなべ
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