ぐったり
僕はいつの間にか
重くて濃い夜に迷いこんだのでした
橋の上の街灯は蛍火のよう
生ぬるい風に吹かれて
少し先を行く懐かしい影を
踏まないように
追いつかないように
ゆっくりあとをつけました
背中の上の空で
大きな音で花火が咲いて
よどんだお月さまより強い光で
三色の火花が飛び散って
ほんの一瞬だけ影は
こっちを振り向く仕草をしました
けれどもまた暗くなって
夜の中へとひとりきり
遠く遠くさ迷いました
僕はいつの時も
拭いきれない後ろめたさが辛いです
橋を渡りきった先は海の底
塩辛い水でふやけて
とっくに溶けきったあやふな影を
すくえないのに
一滴も飲めないのに
喉を乾かして探しました
頭の上の水面に
ぐにゃりと曲がった花火が映って
ぼやけたお月さまより優しい姿で
三色の火花が漂って
ほんの一瞬だけ影が
僕を包みこむ気配がしました
けれどもまた暗くなって
夜の中へとひとりきり
深く深く潜りこみました
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