ひとりぼっちっこ

ぼくは鍵になったのです
穴に刺さって抜けられません
ベランダから伸びる影に
怯えながら寂しがって
しくしく泣いていたのです

洗濯を自分でできるように
なったのだけれど悲しいです

夕焼けに干したおしぼりで
涙をごしごし拭きました
乾いた涙ぶくろには
空の赤さがべったりついて
それきり拭えませんでした

お風呂を自分で沸かせるように
なったのだけれど悲しいです

裏の池からすくっておいた
蓮の葉をお湯に浮かせました
舟みたいに乗りたいけれど
葉っぱにふうっと息をかけて
ただ泳がせるだけでした

お母さんどこへ買い物行ったの
お父さんどこへお仕事行ったの
公園で一人で遊べません
ご飯を一人で食べれません
夜は一人で眠れません


19/07/24 23:33更新 / わたなべ
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