魚の唄

飛び散ったかけらが
へんな魚の形にくっついた
散ったままで消えた
いくつかは大切だったのに

尾ひれに残った
もろい足首だけじゃ歩けない
この町の地面は
硬くて横にはなれないよ

夜風に吹かれてさみしい唄と
水面をつたって川をのぼって
そのまま山のてっぺんの
小さな池に閉じこもった

僕は一匹だけ
月を見上げてゆらゆら漂った
餌も毒もないよ
誰もここに来ることがないからね

さみしい唄だけで
できた泡ぼこを飲んで息をした
さみしい空気でね
またよけいにさみしくなるんだよ

19/07/20 13:00更新 / わたなべ
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