水浸し
路地裏のマンホールが揺れている
マンホールの音と自分の心音が溶け合って
何もかもが水浸しになった街と
一人泥舟を漕いで街をさまよう
誰かのくたびれた背中が見える
今夜は眠ってはいけない
公園の土管の中で叫んだ時の声の響きや
通学路に立っていた電柱の角度だったり
そんなことをぼんやりと思い出しながら
朝が来るのを待たなければ
ああ マンホールの揺れが激しくなっている
眠ってはいけない いけないけれど
もう指先までふやけてしまったから
きっと明日の朝は一人泥舟を漕いで
水浸しの街をさまようことになるだろう
TOP