不思議についての思い出
今日こそは不思議を見つけるぞ
そう息巻く友人に連れられて神社に行ったあの日
畦道を駆けながら生温い風を吸い込むと
楽しいはずなのに何故か涙が出そうになった
忙しなく境内を歩き回る友人を遠目に見ながら
僕は入口の鳥居の下で動けなくなってしまった
彼よりも先に不思議を見つけてしまった申し訳なさと
不意に足首をつかまれたような恐怖を感じて
僕は何故ここにいるのだろう 何故彼と遊んでいるのだろう
遊ぶって何 友人って何 僕って何 何 何
分からない物事が不思議なのだとしたら
僕の頭の中は不思議で満たされていた
しばらくすると友人は畜生と一声高く叫んで
僕を置いてさっさと帰ってしまった
僕は遠退いていく彼の足音を聴きながら
不思議なんて見つけなければ良かったと思った
一人きりの帰り道には冷たい風が吹いていて
淋しいはずなのに何故か涙は出なかった
ふと赤黒く染まった空を見上げると
カラスの群れと誰かが手放した風船が飛んでいた
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