今を生きる日々を送るようになってから

居間の白いカーテンの裾に
いつからかカビが点々と生え出した
起き抜けの口臭が気にならなくなった代わりに
瞼の開きが悪くなった

無意識から滲み出てくる夢の片隅に
いつも風船の束を持った子供が立っている
生温い風に揺れる色とりどりの風船には
見知った人達の顔が描かれていて

年老いた両親や死んだ祖父母に
遠い昔に別れたきりの彼女
たった一人の友人 気が合わない同僚
皆揃っていやらしく笑いかけてくるから

ある朝には黒く変色した灰皿で
また別の朝には空のビール瓶で
顔を一つ残らず叩き割る
それを見て怯える子供の頭も叩き割る

今を生きる日々を送るようになってから
朝が憂鬱になった
コーヒーを飲んでも胃が疼かなくなった代わりに
目のかすみが治らなくなった


24/09/25 20:00更新 / わたなべ
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