金魚の思い出
小学四年生の夏、僕は金魚を飼っていた。
お祭りで買った小さな金魚を一匹。
愛着は感じなかったけれど、
ぽこぽこと吐き出す泡が綺麗だった。
金魚はある日突然死んだ。
水槽の底に沈んでいた。
悲しさや淋しさは感じなかったけれど、
水槽の水が臭くなっていて気持ちが悪かった。
金魚を買ったお祭りには女の子と行った。
彼女の顔はもう忘れてしまった。
彼女はお祭りの数日後に海で溺れて死んで、
僕はお葬式には行かなかった。
金魚が死んだ後、僕は水槽の水を捨てられなかった。
捨てることが何故かとても怖かった。
見かねた親が僕のいない間に、
水槽ごと捨ててくれた。
小学四年生の夏、僕は金魚を飼っていた。
お祭りで買った小さな金魚を一匹。
愛着は感じなかったけれど、
ひらひらと揺れる尾ひれが綺麗だった。
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