裏通りを歩く

横断歩道を渡る小学生の集団を
信号機が青い眼差しで見守っている
笑顔で手をあげて歩く彼等の中に
黄色い帽子を被って紛れ込みたい

僕が横断歩道を渡ろうとすると
信号機は赤く血走った目で睨みつけてくる
信号機のない横断歩道を渡ろうとしても
警笛を鳴らして行き交う車に阻まれる

僕はいつからか表通りを避けて
交通量の少ない裏通りを歩くようになった
裏通りはどこも空気が淀んでいて
朝から酔っている人や汚い野良犬をよく見かける

僕は一人手をあげて裏通りを歩く
誰も僕を気に留めることはなくて
車に撥ねられるおそれもないけれど
僕は手をあげて裏通りを歩く


24/06/22 12:30更新 / わたなべ
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