消えた子供たち

この町は夕日を浴びると
とたんに迷路のようになる
行き先知れずの入り口に
帰り道を忘れた子供が
ふらふらと吸い込まれる

あの子は電柱の陰に消えて
あの子は土手の草むらに消えて

透明になった面影は
夜毎まどろみの門をくぐり
柔らかい土の公園で
ガラス玉を空に投げる
届かないと知りながら

あの玉は父と母へ向けて
あの玉は友と恋人へ向けて

帰れなくなった子供たち
朝日が昇ればいつものように
町を歩いているけれど
誰とも手はつなげないから
風に揺れてさまようだけ


19/06/11 10:18更新 / わたなべ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c