時代と言い訳

やるべきことがない時代に生まれて
現実と空想の区別がつけられません
父さんのスーツを着た広い背中には
僕の未来は重ねられません

誰か 僕を店頭に置いてください
売り物にはなりたくないけれど
指を差されて笑われることには慣れています
僕を知ってください
そして忘れないでください

やりたいことだらけの時代に生まれて
幸せと虚しさの区別がつけられません
母さんの瞳や手の平から感じた温もりは
あの子からは少しも感じられません

誰か 僕に付いてきてください
愛という言葉の意味は分からないけれど
独りぼっちでいることには耐えられません
僕を求めてください
そして離れないでください

やるべきことがない時代に生まれて
やりたいことだらけの時代に生まれて
そんな言い訳しか思いつかないけれど
このまま死にたくはありません
死にたくなんかはありません


24/04/25 13:48更新 / わたなべ
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