首輪
友達が飼っていた犬がいなくなった
散歩の途中で首輪が外れて
そのまま走り去ってしまったらしい
友達は泣きながら話していた
僕は聴きながら胸をときめかせていた
朝のホームルームに知らない先生が来た
僕らの担任は生徒と男女の仲になって
学校をやめさせられたらしい
その日はスカートを履いてきた男子もいたりして
教室が一日中騒がしかった
僕らは沢山の首輪を嵌めながら
この社会で暮らしている
首輪を嵌める経緯は様々で
自分から望んで嵌めることもあれば
誰かに無理やり嵌められることもある
父さんと母さんはたまに親という首輪を外して
夜中にこっそりと抱きあっていた
そんな時は僕も子供という首輪を外して
酒臭いお兄さんやお姉さんに付いて行ってみたり
煙草の煙にむせながらはしゃいでみたりした
僕は鏡に映った自分の顔を見つめながら
ぼんやりと考えたことがあった
もしも僕という首輪も外せたなら
僕は何になれるのだろうか
どこに行けるのだろうかと
友達の犬は数日後に死体で見つかった
交差点の中央で車に轢かれて
血まみれで倒れていたらしい
友達は泣きながら話していた
僕は聴きながら足の震えが止まらなかった
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