ゆりかご団地
母さんが食べた煎餅の粉が
テーブルの上で輝いていた
父さんが吸った煙草の煙が
壁を黄昏に染めていた
あれは幻のゆりかご団地
毎日のように友達と
広場や階段を駆け回っていた
宿題も門限も忘れて
こだまする笑い声を追っていた
儚い夢のゆりかご団地
また会おうねと約束をして
笑顔であの子の手を握った
もう二度と会えないと
分かっていた 分かりたくなかった
滲んだ記憶のゆりかご団地
虫食いだらけの古い地図を
重い瞼の裏に広げて
僕は探し続けている
帰りたい場所 帰れない場所
遠い何処かのゆりかご団地
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