いつからこんなにぼんやりと
赤く染まった壁と床の部屋で一人
僕はぼんやりと外を見ていた
柔くて硝子よりも透明な窓の向こうでは
名前を忘れた古い友人達が輪になって
名前を忘れた古い流行歌を歌っていた
やがてどこからか兵隊がやってきて
牙のような機関銃で友人達を撃ち殺した
僕はぼんやりと凄惨な光景を見ていた
誰かの心臓に穴が開く度に
部屋の壁と床と窓が軋んだ
最後の一人が倒れて動かなくなると
兵隊は陽気な足取りで去っていった
それきり外は静かになった
僕は一層ぼんやりとして
外を見ることをやめた
それから数時間 あるいは数年経った頃
部屋に大柄な男が入ってきた
男の顔は友人達を殺した兵隊に似ていて
認めたくなかったけれど
僕にも少しだけ似ていた
男はくたびれた声で言った
起きろ いつまでも逃げるな いくじなし
僕には抵抗する気力がなかった
分かりました 起きますけれど 僕はいつから
こんなにぼんやりとなってしまったのだろう
目覚めた時はまだ夜中だった
枕もシーツも汗で酷い有様だった
日めくりのカレンダーをめくると
日付は僕の誕生日になった
僕は相変わらずぼんやりとしていた
TOP