こんなものだよ
夢中になってどぶねずみを追っていた
遠い昔 楽しかったあの頃
母さんは僕をきつく咎めた
汚い そんなものに近付くんじゃありません
そんなもの どんなものなの
ちろちろと駆けていく後ろ姿が愉快で
僕は母さんの言葉に頷きながら
それでもやっぱり目で行方を追っていた
いや この一大事に何を思い出しているんだ
不注意で側溝に落としてしまった
全財産の五百円玉を拾い上げないと
今夜何も食べることができないんだぞ
ああ こんなものさ こんなものだよ
きっと今の僕は母さんが咎めていた
汚いどぶねずみと何ら変わらないだろう
軽快に走れない分 もっと惨めかもしれない
あの頃の僕よ
身も心も澄んでいた僕よ
君は今の僕を見て笑ってくれるか
追いかけてくれるか
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