擦り切れた夏の記憶

学校のチャイムが蝉の鳴き声に変わって
朝は穏やかになったけれど
夕暮れがとても寂しくなった

父と母は仕事に行ってしまったから
山の麓の田んぼの隅で
案山子と並んで立ってみた

友達は旅行に行ってしまったから
水平線の手前の凪で
海月と並んで浮かんでみた

赤く膨れた入道雲を睨みつけながら
一人きりで飲んだラムネの味は
炭酸が抜けて甘ったるかった

学校のチャイムが蝉の鳴き声に変わって
心は穏やかになったはずなのに
何故か淋しくてたまらなかった


23/08/24 12:36更新 / わたなべ
作者メッセージを読む
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c