祭りの夜
街を練り歩く神輿の影に
月の明かりが掻き回されて
ぼやけた景色に探し求める
遠いあの夜 儚いあの子
止まらない手の震えのせいで
どれも格好がつかなかった
輪投げに射的 金魚すくい
悔しい思いをしたあの夜
俯く僕の三歩先
真っ赤な髪飾りを揺らして
あれもしよう これも食べようと
無邪気に笑っていたあの子
祭りの季節が来る度に
胸を揺り動かす音色は
ちんどん太鼓のおどけた調子と
さざ波のような越天楽の響き
別れ際 不意にあの子がくれた
たった一口の綿菓子が
僕の唇を甘く包んだまま
今も溶けずに 残っている
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