回帰願望
揺らめく瞼の水平線で綱渡りをする人
汗を垂らして震えるその横顔に唾を吐いてやった
だって僕 何時かは中学生だったから
詰襟から抑えきれない苛立ちが溢れてくる
膨れ上がった脳味噌に乗って黄昏を漂う人
一緒に来るかい 優しく掛けられた言葉に足がすくんだ
だって僕 何時かは小学生だったから
好奇心の扉は家の鍵で閉ざされている
何時かの僕は子供だったけれど その前は何だったろうか
今の僕は大人だけれど 大人って何だろうか
部屋中に響き渡る赤ん坊の泣き声
空が白んでいく速さに追い付けなくて
毛布を被る 暗闇へ逃げ込む
誰かの心音に安らいでいた 自分ではなかった何時かへと
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