おじさんの航海

あのおじさんの口笛は
いつも陽気にらりぱっぱ ぱあらりら
目尻に浮かべたボロの小舟で
どこか遠くを目指してた

おじさんはよく言っていた
俺は沢山の嵐に遭ったが
それでも沈まず生き延びた
俺は一流の船乗りなんだ

だけどいつでも船酔いだった
真っ赤な頬に震えた手
誰にも見えない地図を広げて
しゃがれた響きのヨーソロー

泣きべそをかく子供みたいな
歪んだ顔で笑ってた
そんな姿が情けなくて
少し怖くて でも好きだった

おじさんのあの口笛を
真似して僕もらりぱっぱ ぱあらりら
ボロの小舟が目尻を濡らして
遠いあの頃へ流れてく

23/02/10 21:12更新 / わたなべ
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