夏の夕暮れ
山の麓の雑木林から
無数のアブラゼミ達の声が
騒々しく けれどどこか淋しげな響きで
生温い風と共に流れてくる
空き家の庭の片隅では
一本だけ残された紫陽花が
まるで 泣き疲れたかのように
暗い表情で俯いている
入道雲 線香の匂い 滲んでぼやけた打ち水の跡
家路へと伸びる影に抗いながら
沈みゆく日を追う子供の背中
どれも儚い幻だと 分かってはいるけれど
僕はいつの頃からか夏が来る度に
心の夕暮れに迷い込むようになって
23/02/10 21:13更新 /
わたなべ
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