巡り行く夏の夢
陽炎の奥 沈む夕陽は
遠い昔に投げ捨てられた
真っ赤にただれた脳みそで
母の胸元を思わせる
なだらかな山並みの影に
郷愁を歌う ぼやけた残像
追いかけるのは 影 残像
気付けば 錆びた自転車は
チェーンの軋む音の代わりに
日暮の声を響かせて
前のつもりで後ろに進む
昨日の夢は砂利の小道
行き着く先の 明日は幻
どこまで行っても 夢 幻
天狗に会ったと 鬼に会ったと
幼い僕の心を乱した
寂しさの理由を今頃知って
瞼の縁に染み付いた
涙の痕に一人きり
俯いている あの男の子
陽に焼けた頬を伝い落ちる
涙の筋に一人きり
佇んでいた あの男の人
僕の姿は 夢 残像
僕の姿は 影 幻
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