砂時計の中
空の色が抜け落ちた瞬間
電柱の先 揺れる風船の上で
雲は反対に流れ出した
じゃれあっていた野花たちは
背筋を伸ばした一本杉に
キッと睨まれて口をつぐんだ
空の色が抜け落ちた瞬間
夢中で自転車を漕いでいた子供は
よろけて田んぼに突っ込んだ
顔を撫でていたそよ風の隅
不意に漂った母の匂いに
足がもつれて立てなくなった
暗い病室の枕元に
誰かが置いた砂時計
空の色が抜け落ちた瞬間
もしも 僕らはその中の
煌めく一粒なのだとしたら
時の残像なのだとしたら
夕陽のように沈む瞳と
重なり合った細い指
空の色が抜け落ちた瞬間
誰もがその幻を見た
何もかもが変わるようで
何時までも続いていく気がした
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