でたらめが泣いている
ああ 胸の片隅の小さな丘で
ぼんやりと街を見下ろす度に
でたらめがそっと泣き始める
自分はどこに帰ればいいのか
帰る場所があるのかすらも分からずに
僕の背中にもたれ掛かって
幼い頃 僕は沢山のお菓子や玩具と
大人へのささやかな反抗心を持ち込んで
この丘に秘密基地を作った
決して見つかることはないと
見捨てられることはないと分かっていたから
安心して隠れられた
日が暮れ出すと 寂しさを誤魔化す為に
親や学校の先生に見立てたこうもりを
石を投げつけて追い回した
決して当てることはできないと
捕まえることはできないと分かっていたから
目一杯意地悪ができた
けれどいつしか こうもりは姿を消して
石もどこかの山に運ばれて
温もりを失くした丘からの景色は
見慣れない白黒写真に変わっていった
そして全てが色褪せてしまった今は
ただ夕陽だけが 擦れた膝のように赤くて
ああ もうすぐ夜になるというのに
でたらめはまだ泣いている
過ぎた日々が戻ることはないと
帰ることはできないと分かっていながら
懐かしい屋根を探す瞳や
錆びついた鍵を握りしめる手に
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