満月


  

その春の花は
春の花なのに

もう
季節は夏になったのに

蕾のままで
春の夜には咲けなかったので

ちいさな流れ星をいくつも
その蕾の中にたいせつに仕舞い込んで

花壇の隅っこで
暮らしているんだ

向日葵たちの眠る夜
夏の星空をみあげながら

それでたまには
蕾の中の流れ星たちが
シャンシャンと歌ったりする

戦いを避けたい
春の花は
それでいいんだ、それでいいんだと
降り注ぐ白い粉みたいな月光を
たったひとり浴びつづけながら

挑む目つきじゃなく
撫でつけるように
やさしく満月をみあげているんだ

夜空に浮かぶ海月みたいな
心の闇を洗ってくれる
損とか得の話じゃなくて
過去を棄て去るわけでもなくて

ただ、一心に、一心に

ただ満月をみあげているんだ











23/07/18 08:01更新 / 花澤悠
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