迷霧の連弾 108
理恵は木立の間の
狭い大空を仰いでいる
いつものボクなら
その姿をうっとりと
眺めているだけなのに
理性が目覚めていないから
畏れることなど
気にもならないで
理恵におはようと
あいさつをした
理恵は穏やかな笑顔で
瞳を飛ばして
ボクの姿を確認したら
弾むようにおはようと
あいさつを返してくれた
なぜこんなにも
ヒグラシが賑やかなんだろう
思ったままを問いかける
ヒグラシは夕方よりも
朝の方が盛況なんだよ
理恵は楽しそうに答えた
それでも名前がヒグラシなのは
少し変な感じだね
ボクはまだ覚醒しない頭で
思ったことを
そのままに言っていた
理恵はクスクスと笑って
それは人間が
勝手に名付けただけだから
もっともな答えを返して
でもヨアケという名前では
やっぱり夏らしさがないから
これで良かったんじゃない
そう結論づけた
TOP