ポエム
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愛まで届くくらい
少年はナイフをもって佇んでいた
打ちひしがれてどうしようもない
黝い空は泣いていた

この世界が加害者で、自分は被害者であると訴えるために
錆び果てた景色にさよならを言う
今この瞬間もっとも不幸なのは僕
それが正しいと思えるくらいに
世界は僕に冷たかった
吹きつける風は鉄の味がした

増える傷跡はアクセサリーだ
僕が僕であるために必要なもの
悲劇のヒロインになりきっていては
あなたの愛も歪んでみえてしまう

腕を切る。腕を切る
目のようにパックリあいた傷から
深紅の涙が滴り落ちる
もうこれ以上傷つかないように
苦しまないように
僕は自分を痛めつけていく

あなたの愛は砂糖菓子のよう
口に入れたら甘みが広がる
だけど知らぬ間に溶けていってしまう
目に見えぬものは信じられない

少年はナイフをもって佇んでいた
百円で買ったチャチな凶器だ
だがそれよりももっと鋭く
簡単に人を傷つけるもの
それは人。
他人を傷つけて、傷つけて、傷つけて。
それでも懲りないのだから
まるで僕の人生のように。

もう帰らないと誓った今日は
すべての人にありがとうを言おう
あなたの愛まで届くように
鉄橋の上で手を合わせ祈ろう

どうかみんなが幸せになりますように
そしてそれと同じくらいに
僕もこれから生きていくんだ
あなたの愛まで届くくらいに
23/03/25 18:25更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
この詩は、リストカットの心情を描いた詩です。
暗い詩ですが、最後には生きる意志を表現しています。

この詩は創作ではありません。僕自身の心の詩です。

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