いそいそと、正しいと思ったことだけを
ほんとうと思ったことだけを
美しいと思ったことだけを
のこしておいて
――まど・みちお


消しゴムを使って、
いそいそと影を消す。
あなたを愛する気持ちも
ほんとうは誰かを愛する自分が欲しかったから
あなたという客体を利用したのかもしれない

おもてに表れた実体だけを見ていては
恋は美しく映る
だからすべてが正しく思えて
すべてをあなたのせいにしたくなってしまう

けれど本当に愛していたのか
去っていくものを追いかけたいだけでは？
この世界では、本当が嘘になって
嘘が本当になっていく。

こんなに大好きな気持ちも
こんなに苦しいのも
僕の知らないところで
僕が作った物語だとしたら？

消しゴムを使って、影を
いそいそと
いそいそと消していく。

■作者メッセージ
こんな深夜のつぶやきも、朝になれば、泡のように消えていくのです。