ポエム
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冬解け
きっぱりと冬が来た
八ツ手の白い花も消え
イチョウの木も箒になった
――高村光太郎


木々はほうき、
ジダレザクラは幽霊の髪。
しかし冬は、
冬は溶けていますよ、
光太郎さん。

あなたに刃を向けた冬は、
あなたを刺したその魂は、
どうもこの麗日には、ぐにゃぐにゃ軟化し。

ポカポカした日を浴びて、
小さな子どもがシャボン玉飛ばす。
その虹色の、泡でできた希望、
ピチク、パチク、音たてて消える。

草むらの鳩たちは、せっせせっせと、
僕の落とした悲しみを拾う。

モクレンの白い花は、僕の心に灯った、
ろうそくの光。

アラセイトウの紫や、
スイセンの黄色。
僕という個性の色、
個性の花が、鮮やかに咲いた。

今までの苦しみを、苦しみで終わらすな。
今までの失敗を、失敗で終わらすな。
そのために今日も、今日を描いて。

ささやかに咲いた、僕という花。
そのために僕を、見捨てることなく。
生きて、生きて。
喘ぎ、喘ぎ。
24/03/18 19:44更新 / たろう



談話室

■作者メッセージ
よく晴れた休日の午後、新宿にある大きな公園に行って作った詩です。

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